読書メモ⑯
「われわれは来週、来月、来年と、多くの孤独な人びとに会うことになるだろう。彼らに、なにをしているのかとたずねられたら、こう答えればいい。われわれは記憶しているのだ、と。…(中略)…そしていつの日か、充分な量を記憶したら、史上最大のとてつもなく巨大な蒸気ショベルをつくって史上最大の墓穴を掘り、そこに戦争を放りこんで埋めてしまうんだ。」
-(『華氏451度[新訳版]』より)
【期間:2021/08/16~2021/08/31】
①『華氏451度[新訳版]』レイ・ブラッドベリ 訳・伊藤典夫(ハヤカワ文庫・2014)
②『知性は死なない 平成の鬱をこえて』與那覇潤(文藝春秋・2018)
③『しのびよる破局 生体の悲鳴が聞こえるか』辺見庸(大月書店・2009)
④『躁病見聞録 この世のすべては私のもの』加藤達夫(幻冬舎文庫・2010)
⑤『欲望としての他者救済』金泰明(NHKブックス・2008)
⑥『「疑惑」は晴れようとも 松本サリン事件の犯人とされた私』河野義行(文藝春秋・1995)
⑦『日本の選択4 プロパガンダ映画のたどった道』編・NHK取材班(角川文庫・1995)
⑧『よせやぃ。』吉本隆明(ウェイツ・2007)
①-「華氏451度-この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士(ファイアマン)のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく……本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不屈の名作、新訳で登場!」(裏表紙より)
*1953年刊行の作品。本が禁制品となる、ディストピア。なにも考えるな、なにかをわかっている気分にさえなっていればいい……これってそのまま、現在(いま)だろ。
②-「世界史の視野から、精緻に日本を解析した『中国化する日本』で大きな反響を呼んだ筆者。一躍、これからを期待される論客となりましたが、その矢先に休職、ついには大学を離職するに至ります。原因は、躁うつ病(双極性障害)の発症でした。本書では、自身の体験に即して、「うつ」の正しい理解を求めるべく、病気を解析し、いかに回復していった過程がつづられています。とともに、そもそも、なぜこんなことになってしまったのか、と
筆者は、苦しみのなかで、自分に問いかけます。-自分を培ってきた「平成」、その30年の思潮とは何だったのか。いま大学は、「知性」を育む場となりえているのか。喧伝される「反知性主義」は、どこから始まったのか。なぜ知識人は敗北し、リベラルは衰退したのだろう。-一度、知性を抹消された筆者だからこそ、語れることがあるのです。病を治すのも、また「知」なのだ、と。これから「知」に向かおうとするすべての人に読んでほしい、必読の一冊です。」(Webサイト:文藝春秋BOOKSより)
③-「異質の破局が同時進行するいまだかつてない時代。いま真に取りもどすべきものは、はたして経済の繁栄なのか? 人間とはなにか、人間とはどうあるべきかを根源から思索する。」(Webサイト:大月書店より)
④-「鬱で押し込められたエネルギーは、躁のビッグウェーヴとなって突然現れた。迸る熱狂に突き動かされ、著者は世界の頂点を目指す!が、オーストラリアから強制送還、逃走しバンコク市街で大暴れ、タイ国際拘置所からの脱出計画、そしてマフィアのボスを訪ねてイタリアへ…。禁断の世界紀(奇)行、ゆめか現か妄想か!?躁病者、初めての衝撃手記。」(裏表紙より)
⑤-「欲望としての他者救済論がめざすのは、「私」と他者の欲望の相互承認である。「ともに生きようとする欲望」があるからこそ、人間は、困っている他人を見たら、自然に手助けしようとする。それは、手を差しのべたいと思う「私」の欲望と、助けを待つ他者の欲望との出合いである。他人を助け、他人から助けられるという経験をとおして、「私」は「私自身」のなかにある「ともに生きようとする意志」を自覚するのだ。こうしてたどり着くのは、人間の<関係をとおしての自立性>である。欲望としての他者救済論は、他者を助け、他者から助けられることによって、互いの自由と自立を認め合うのだ。」-本文より(帯より)
*著者の言葉の用い方やいくつかの見解について、不用意ではないかと感じてしまった。うーん。
⑥-「善良な一市民が、突然、犯人に仕立てられる恐怖。松本サリン事件の被害者が容疑者にされていく過程を、日記をもとに克明に明かす」「いまや周知の冤罪事件となった「松本サリン事件」。1994年6月27日、最大の被害者だった河野さんは警察の見込み捜査で犯人と疑われ、そのリーク情報をもとにマスコミも疑惑報道をくりひろげた。無実が証明される、翌95年3月20日の「地下鉄サリン事件」の発生まで9カ月にわたる河野さんの無実への苦闘の全てがここにある。」(Webサイト:文藝春秋BOOKSより)
⑦-「昭和のはじめ、映画がトーキーになった。それまでのサイレント映画は、国境を越えて理解できる純粋な面白さがあった。世界は一つの文化を共有していた。しかし、映画に音が入ったとき、表現力が飛躍的に大きくなる一方で、映画は「ことば」という大きな壁にぶつかった。時あたかも世界大恐慌、ナショナリズムの台頭と共に、映画はプロパガンダの武器として利用され始める。娯楽から国策映画へ、不幸な変化の軌跡。」(裏表紙より)
⑧―「「歴史を流れるようにするための時代の自意識」とは?!/稀代の思想家が熱く問いかける、喫緊の課題と解決方法-本タイトルは、“情けないほど低レベルになっている日本”に対する著者の苦笑交じりに放つ口癖から命名したものである。「雑談をしませんか」ということから始まってできあがった本書。5回にわたってインタビューをしたのは、“思想界”の素人たち。しかし、疑問に思っていることを愚直に真剣にお伺いしたため、吉本さんも自由奔放に語り、そのため、吉本思想がわかりやすく解明され、結果としてこれまでに類を見ない吉本隆明の“思想書”になっている。」(株式会社ウェイツWebサイトより)
*これまで吉本隆明の著作にほとんど触れたことがない、私のような初学者にとっても敷居の低い平易な言葉が用いられていることを魅力に感じて手に取った一冊。正直に言ってしまうと、14年前の初版であることの時差を前提にしたとしても、本書における氏の発言のいくつかに私は受け入れ難いものを感じてしまった。また、インタビュアーらの姿勢が”大先生礼賛”に終始しているような気がして、大変居心地が悪かった。…私が変なのかしら?
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