クローズアップ現代「『はだしのゲン』はなぜ“消えた”?」

今年、広島市の小中学校で使用されている平和教育の教材から漫画『はだしのゲン』がすべて削除された。番組ではその経緯を検証する。
広島市の小学校教員や、教材の改訂会議に出席していた教員らが顔を隠し声を変えて証言をしているVTRを見て暗然とする。この程度の発言をするのに顔を隠さねばならない私たちの社会の“おかしさ”を、それを当たり前のことと受け止めている私たちにある病理を考える。
タリバンがアフガニスタンの女性たちから教育を奪おうとするのは、教育の力を知っているからだ。今回の教材の改訂に対し、まるで興味のないような態度を示す教員たちは、自分たちの担う役割の重要性を、教育の力を信じていないのではないか。
太平洋戦争の末期、住民を巻き込んだ苛烈な戦いの末に四人に一人が亡くなった沖縄。平和教育の授業風景の、伸びやかな子どもたちに希望を見る。教員は、子どもたちが自ら考えることを妨げず、ウクライナの戦争など“今の問題”と繋げて考えることを避けない。子どもたちの見えないところで、大切に読み継がれてきたものを大人がこっそり教材から削除してしまう行為が持つ意味を改めて考える。

アッチ側だ、コッチ側だ、右だ左だとレッテルを貼り、分断を煽る思考停止した態度にはもうウンザリだ。都合の悪い出来事を指差してフェイクニュースだと叫ぶやり口を、大本営発表以外の言説を認めない社会を、民主主義の旗の下に暮らす私たちは決して許してはいけない。すべての人が平和に安全に、どこまでもその人として生きることが出来る世界よりも守らねばならない“立場”などないはずだ。
平和教育の地位の低下は、この国が、私たちが目指す未来がつくり出す影なのだ。

書くこと。生きること。:Hiromi's Blog

書くこと。学び、考えること。難病ALSに罹患し、世界や自分のあり様を疑う戦慄の時間。生きた証として書いていきます。 satohiromi.amebaownd.com/