人生は美しい。

劇団銅鑼公演No.59「『真っ赤なお鼻』の放課後」をシアターグリーンBOXinBOX(東京・池袋)へ観に行く。
若者たちの成長劇。観終わった後に、ある映画のタイトルが自然と頭に思い浮かんだ。「Life is beautiful」。ままならない、それぞれの境遇。それでも人は命ある限り今日を、明日を生きていく。ALSに罹患し医療的ケアを受けながら車椅子で生活する母親と、その母を献身的に介護する高校生の息子。彼は主人公の幼馴染みだ。彼らが舞台に登場すると、客席全体が息を飲み、緊張感で空気が一変する。真摯に丁寧に、並々ならぬ思いで役作りをされてきたことが伝わる。非常に困難な役柄に、素晴らしい演技と舞台への情熱と、作品に関わるすべての人たちへの誠実さを持って臨み、愛情に結ばれた親子として確かに彼らはそこに存在していた。
主人公やクラウンや両親たちの何気ない一言に考えさせられたり、クスッと笑わされたりしたかと思えば、思わず我が身を振り返り、はてどうだろうかと思ってみる。若者たちへの応援歌。今後、学校での公演も予定されていると聞いた。ぜひ一人でも多くの生徒たち、若者たちに観て欲しい。もちろん、かつて若者だった人たちにも。

劇団銅鑼の皆様、素晴らしい作品に微力ながら関わらせていただき大変光栄に思います。有難うございました。

ままならない我が身を抱きしめながら、明日もまた生きていこう。


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【あらすじ】
 高校2年生になる青砥雛子は卒業後の進路について悩んでいた。
それは進学や就職に対して未来への明るいビジョンがなかったから―
夢があり希望がある。そんな風に思える若者たちが今の日本にどれだけいるだろう?世界と比べれば、それでも平和であり、水道水も飲める。空気も悪くない。治安もニュースで見るほかの国よりマシである。然し、社会や大人たちはどことなく無機質で、中身が無くて、透明で、贅沢で、賢いだけで、SNSでは"いいね"、を競い合うことばかり。
医療事務の仕事を見学するため病院に行った雛子。そこいたのは真っ赤なお鼻のクラウンだった。病室で子どもからお年寄りまで不思議な芸当で沢山の笑顔の花を咲かせていた。
何かをやりたいとか、何かになりたいとか、そういった何かがなかった雛子にやっと芽生えた夢の蕾。その蕾を咲かせるために沢山の情熱、そして挫折とも向き合ってゆくなか、雛子にはどうしても応援したい存在がいた。それは母の介護により、音楽の夢を諦めてしまった幼馴染の陽人だった。
現代の若者が純粋な夢と出逢い、現実のなかでたくさんの葛藤を抱えながら、ひとりの人間として成長してゆく...
意地らしくも可愛らしい若者たちのお話。
【企画にあたって】
 子どもたちを取り巻く社会・家庭環境は年々厳しい状況の中、近年特に注目され社会問題になっている「ヤングケアラー」と、プロのクラウンが病院の小児病棟を訪問し子どもたちにひと時の楽しい時間を届ける活動を行うクラウンを題材に「子どもが子どもでいられる社会」「葛藤を持ちながらも希望を持って生きられる社会」の大切さを伝えます。
脚本には社会問題を扱いながらも心の機微を大切にし、強い普遍性と現代のリアルのバランスを保つ丁寧な劇作の大西弘記。
演出には国内外での演出活動を中心に子どもたちの為の演劇教育にも力を入れている大谷賢治郎。
未来を担う若者をはじめ、今を生きる全ての人たちに贈る作品です。
■Cast
横手寿男・館野元彦・馬渕真希
佐藤響子・竹内奈緒子・庄崎真知子
永井沙織・深水裕子・山形敏之
齋藤千裕・早坂聡美・宮﨑愛美
齋藤美香・山口真実
■Staff
美術/池田ともゆき 照明/鷲崎淳一郎
音響/坂口野花 衣裳/宮岡増枝
舞台監督/櫻岡史行 音楽/青柳拓次
所作指導/汎マイム工房
舞台監督助手/鈴木正昭 演出助手/柴田愛奈
音声ガイド/藤井佳代子(舞台ナビLAMP)
      福井夏紀・中島沙結耶
宣伝美術/広田明花里
制作/齋藤裕樹・佐久博美


書くこと。生きること。:Hiromi's Blog

書くこと。学び、考えること。難病ALSに罹患し、世界や自分のあり様を疑う戦慄の時間。生きた証として書いていきます。 satohiromi.amebaownd.com/