長い旅


夜中にすみません

きっと もうお休みですよね

ここから先は ぜひ

夢の中で読んでもらえたら


今日 近所の店に

新しい眼鏡を受け取りに出かけました

ビルの谷間に細い月

もうすぐ閉店時間という頃です


店からの帰り

新しい眼鏡をかけて機嫌のよい私は

少し寄り道をしました

今夜は風が強いですね、と

ヘルパーさんがひざ掛けを直してくれました


誰もいない公園

こんなに広かったっけ

遠くて深くて濃くて透明な空

ふと見上げると

そこにオリオン座がありました


都心の灯りに負けない星たちの

悠悠堂堂 我らここにあり

そうだ

あの光は何万年も前のものだって

たしかどこかで聞いたことがあったような


ああ、あなたにもこの星空を見せたいな

気の遠くなるような 長い旅の果て

今やっと私に届いた光を


明日からしばらく入院なのですね 

どうか どうか

あなた自身を ウンと大事に

労わって 

抱きしめて

慈しんで


明日からの毎日が

ずっとずっとずっと

あなたにとって

心から安らげる時間でありますように

一緒にいっぱい、生きましょうね


次の約束は 公園で

おやすみなさい

またね



書くこと。生きること。

書くこと。学び、考えること。難病ALSに罹患し、世界や自分のあり様を疑う戦慄の時間。生きた証として書いていきます。 satohiromi.amebaownd.com/