フェイクと、人の弱さと愚かさについて
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241226/k10014678491000.html
NHK| WEB特集[なぜフェイクは広がる?サピエンス全史の著者 情報で読みとく]
「私たちは歴史上最も高度な情報技術を手にしているにもかかわらず、理性的な会話を行う能力を失いつつある」
世界的なベストセラーとなった「サピエンス全史」の著者で歴史家のユヴァル・ノア・ハラリ氏のインタビュー。
「大きな疑問は人間がそれほど賢いのであればなぜこれほどまでに愚かであるのか。『なぜこれほど自滅的な決定を下しているのか?』というものです。」
「真実はしばしば苦痛を伴います。自分自身、あるいは自国について、知りたくないこともたくさんあります。それに対してフィクションは、好きなように心地よいものに作ることができます。つまり、コストがかかり、複雑で苦痛を伴う真実と、安上がりで単純で心地よいフィクションとの競争では、フィクションが勝つ傾向にあるのです」
「最も重要なのは、自己修正メカニズムです。『自分にも知らないことがある』、『間違いを犯すこともある』と認める能力です。それは、他者を修正するものではありません。他者の問題を指摘するのは簡単です。自分の間違いを修正できる能力なのです。」
“魔女狩り”がヨーロッパで広まった15世紀。それは活版印刷が発明され、人びとがかつてない量の情報に触れることができるようになった印刷革命(情報革命)の時代でもある。
印刷革命の時代に最も人気があった書籍は科学書ではなく,過激な宗教文学や魔女狩りのマニュアルだったという。膨大な情報が拡散する現代。教科書でも古典文学でも、歴史書でも哲学書でも科学書でもない、誰によるものかもわからない過激で単純化された投稿や解説動画のようなものに多くの人びとが夢中になり、“自分とは違う”人びとや集団を設定し憎悪や分断を深めている今を、重ねずにはいられない。“魔女”は誰でもよい。自分でさえなければ。
フェイクやフィクションの「単純さ」と「伝わりやすさ」。メタはファクトチェックの廃止を検討するという。私たちよりも企業の存続を選んだのだ。「腑に落ちたい」「わかった気になりたい」という私たちの背中に、確証バイアスやアルゴリズムがそっと手を伸ばす。私たちは弱い。
終わりに、昨秋、あるプロジェクトを通じて交流を持った中学生たちに、私から贈らせていただいた言葉を転記する。
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最後の時間、静かに、真剣に私の話を聴いてくださった皆さんの真剣な目を、私は忘れません。
皆さんはもうすでに、大切なものをしっかりと心の中にお持ちです。それだけで十分に、自分が自分自身であることに自信を持ってください。
同時に、すべての人にとって、知らないこと、知るべきことも無限にあるのだということも知って欲しいと思っています。実は自分は何もわかっていないのではないか、と思えた人にだけ、辿り着ける場所があり、出会える仲間がいると私は信じています。
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