玉蜀黍
北の国の土と風と水と太陽を纏って
ぶあさと力強く目の前に現れたあなたが
ちょっと怖かったのです
今にも 張りのある低くて太い声で
やあ、などと不躾に話しかけてきそうで
だから描いてやったのです
目を凝らしよくよく観察をして
線に描きとり、色を置く
もっと見る もっと知る
もっと
もっと
いつの間にか私は
あなたを怖がらなくなっていました
その殻が居間の蛍光灯に濡れて光り
その髪がくるくると小さな魚のように遊んでいるのを
私は繰り返し眺めては描いて
あなたを少し知ったのでしょう
来夏もまた 健やかで
人懐こい笑みを浮かべた堂々たるあなたに
目を見張り心踊れる日々が
当たり前に どうか 当たり前に
私たちに訪れますよう
身勝手と知りつつ
長過ぎる夏の終わりに
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