証
なぜ書くのかと言えば、それが「私が生きていたこと」の証だからである。
それは「私が、私として死んでいくこと」でもある。
確かに私は生きていたと
私は私という、個であったと
私は、声を失うが、
私は、私以外の誰かが私を語ることを、全身全霊で拒絶する。
あいつは、苦しんでいると、不安なのだと
あいつは、虚しかったのだと、絶望していたと
あいつは、もがいていると、許していると
あいつは、幸せだったと、もっと生きたかったのだと
語るな。私の声を奪うな。私を利用するな。
私を、いなかったことにするな。
戦場で彼は、誰として死なねばならなかったか。
収容所で彼女は、誰として死なねばならなかったか。
私は個として、すべてのものから疎外され、峻別されることを望む。
私は 私として、ここに生きて、死んだのだと
なぜ書くのかと言えば、それが「私が生きていたこと」の証だからである。
それは「私が、私として死んでいくこと」でもある。
0コメント