約束
ー「もう5月も終わりですね」「え?あれからもう一年になるんだ」
日常的な、よくある会話。
十年前の自分だったら、何も考えずに交わしていた言葉。
ALSを患った今は違う。
どんどん病状は悪化しているのに、あと少ししか生きられないのに、気づけばもうこんなに時間が経ってしまった。経った時間の分だけ、死へ近づいたということだ。この数ヶ月、一年という間、いったい私は何をしていたのだろう?一日一日を大事に生きていたか?自分を更新させるために力を尽くしたか?5か月前と、一年前と比較して、私は人としてちっとも成長していないのではないか?このまま愚図愚図とダラダラと、時間の過ぎるのを眺めているだけでいいのか?今が一番、動けるときなのに。明日があるかもわからないのに。
ー「紅葉を見に行きたいね」「今年の秋にイベントを計画してるから来てよ」
いやいや、半年も先のことなんてとても考えられない。約束のその日に、私はどのくらい体が動かなくなり、どのくらい呼吸が出来なくなっているのだろう?私は“変わってゆく”。そもそもその日に、私は生きているのか?半年先のどんな姿の私を想像して、声をかけてくれたのだろう?どうして約束なんて出来るんだ?生きているかもわからないのに。
「そうですね」なんて、世間話の教科書通りに返事をしながら、私の半分は別のことを考えている。一番考えたくないことを。一番考えねばならないことを。
いつか、という約束は、たぶん実現しない。ならばそれがどんなに躊躇われても、腹を括ってその日を約束しましょう。ユビキリゲンマン。その代わり、キャンセルになってもどうか勘弁してくださいね。そのときはきっと、どうにもならない理由があるはずなので。
今この瞬間から、とりあえず取り掛かれること。
今日を大切に生きましょう。
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