初春月
正月、遠方にあるグループホームから遊びに来ていた優しい義母は、認知症の進行を認識できてしまう自分と、遠ざかっていく記憶や周囲の景色との狭間で、ひとり静かに戦っているようでした。
「このみかん、甘いね」と、周囲に気遣うように何度も呟きながら。
今から80年ほど前、日本で、世界中で、信じられないほど大勢の人の命が、心や体の健やかさが、家族や友人たちとの平穏な人生の時間が、あろうことか人の手によって惨たらしく破壊され、奪われ続けました。
今この瞬間も、私たちの世界には、自分が自分であることすらも脅かされながら、自分の大切な何かを壊され踏みにじられ手放しながら、細い糸のような危うさ脆さの上に、命を繋ぐ人たちがおられます。
災害や事故や貧困や紛争や、身を切らほどの孤独や不安や喪失感の中に今を生きるすべての人に、ALS当事者として、いえ、一人の人間として、心からの連帯を表明します。
どこまでも、どこまでも、一緒に生きてまいりましょう。
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