『指揮官たちの特攻』
『指揮官たちの特攻 幸福は花びらのごとく』城山三郎(新潮文庫・2004)を読む。経済小説などの作品の多い著者だが、自身、17歳で海軍体験をしている。
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むごい。
明日死ねと命令され、人間爆弾、人間魚雷といった特攻兵器に詰め込まれ括り付けられ、その命を、母の妻の名を叫びながら無残に散らしていったまだ頬も桜色に輝いていたろう若者たち。
ー「この世にこんなことがあっていいのか」
一人の人間として死ぬこと叶わず一塊の兵器として亡国の棺の中に斃れることを命ぜられた彼らを思う。まだ、まだ若く未来へと迸る程に輝くはずの命だった。
敗戦を機に、手のひらを返したように彼らまた遺族らに白い目を向け石を投げつける世間の人びと。敗戦の憂さ晴らしにと九死に一生を得た少年兵たちを私刑する上官たち。
頁を繰る毎に、私は申し訳なさに、居た堪れなさに、息が苦しくなる。
私たち人間は愚かだ。私たちはいつも、それを知っていなければならない。
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