読書メモ⑨
本を読み続け、日々しみじみつくづくと実感されることが二つある。
世界には、世の中には、私の知らないことしかないということ。そして文学は、少なくとも私にとって欠かせないものであるということだ。
今ここ、の視座から、自分を、物事を考える。今でない時間、ここでない場所、を思うとき、私は目がくらみ足元がストン抜け落ちてしまうような感覚を覚える。本当に知っていることなんて、私には一つもない、という真実。もうあまり残された時間のない自分が、今尚、何も知らず何もわからないままであることに気付かされて、今更に狼狽する。そしてほんの少しでもマシになって生き終えてやろうと、往生際悪く今日もページを繰る。
人の豊かさ底深さ不可解さに何とかこの指先を触れてみたいと欲して、私は今日もまた文学に甘えその膝の上に乗る。痛みや渇きや臭いや寒さや焦りや恐怖や妬みやかなしみに咽び、嗤われ裏切られ殴られ追われ蔑まれ指さされ罵られることなしに、私は何も理解出来はしない。そして、私はここから歩き始めることも出来ないのだ。
【期間:2021/05/01~2021/05/15】
①『なぜわれわれは戦争をしているのか』ノーマン・メイラー 訳・田代泰子(岩波書店・2003)
②『ベトナム戦記』開高健(朝日文庫・1990)
③『無罪』大岡昇平(小学館文庫・2016)
④『アジアの聖と賤 被差別民の歴史と文化』野間宏・沖浦和光(河出文庫・2015)
⑤『深い河(ディープ・リバー)』遠藤周作(講談社文庫・1996)
⑥『イエスの生涯』遠藤周作(新潮文庫・1982)
⑦『沈黙』遠藤周作(新潮文庫・1981)
⑧『島抜け』吉村昭(新潮文庫・2002)
⑨『逃亡』吉村昭(文春文庫・2010)
④―「差別・被差別問題を生涯のテーマとしてきた両先達が、アジアの調査を共にしながら、カースト制の外のインド、中国、朝鮮にまで差別の根源を遡り、さらに日本の被差別部落問題まで考察する。貴/賤、浄/穢、尊/卑の交錯から、差別問題の本質と歴史的変遷、被差別民の文化に及ぶ、画期的基本文献の初文庫。」(裏表紙より)
⑦―30年振りに。
⑧⑨―重厚で抑制的なスリル。時代と人間。
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