何者
私の特技。それはすぐに人にナメられることだ。
相手の年齢性別は関係ない。私は出会って瞬時に相手から「尊重する必要のない、雑に対応しても全然構わないヤツ」と見做されて、実際その通りに扱われる。相手に自覚は無いのかもしれないが、その言葉や表情、ちょっとした仕草などから、私は自分がそう値踏みされているのを嫌でも感じ取ってしまう。
私が中年女だから?高価な身なりをしていないから?要領よく喋れずぼうっとして緊張感の無い顔付きをしているから?エラくもなく特別でもなくあなたにとって利用価値が無さそうだから?…
もういい年齢だというのに、いったい私はいつまでこんな風なのだろう。
〈どうせこの手の女は無知で無学で社会的立場も無くて、オレ様よりずっと劣った存在なのだ。〉
ああまたか。なんだか吐き気がする。せめてもう少し隠してくれたらいいのに。
〈やあやあ我こそは社会的使命の下に聖なる役割を付託された、余人をもって代え難い者なり。それに引き換えオマエときたら無力で何者でもない人間、丁寧に応じたところでオレ様には何の得もない。〉
あーあ。まいったな。別に私は優遇されたい訳でも賞賛されたい訳でも無駄に緊張され身構えられたい訳でもない。ただただ、自分こそは特別で重要な存在であり、比べてオマエ程度のヤツなんかまともに相手をするのも馬鹿馬鹿しい、という訳の分からない情念のオーラに触れて火傷をしたくないだけなのだ。なぜすぐに自分と誰かとを比較して、一方的に謎基準の優劣をつけたがるのだろう?どうして尊重する価値もない人間がいるなんて思えるのだろう?
他者といちいち比較をして、自分は特別で優位な存在だと確認し続けなければ生きてゆけないというのであれば、それはそれで気の毒な話だ。しかし気の毒ではあるけれど愚かしい。誰もが何者かであって、何者でもない。後回しにされていい人間なんて、尊重されなくていいいのちなんて、あるはずがない。
心の中で私をナメてかかるのはもちろんあなたの自由だ。しかし私はそんなあなたのことを、尊重はしても尊敬はしない。そしてもしも、この世界のどこかにいる私の大事な仲間たちのことをあなたが尊重しようとしないならば、私はそんなあなたのことを断じて赦すことはない。
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